『建築確認申請と建築士』の歴史
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中村靖雄
住宅などの建築物を建てる際には建築基準法に定められた『建築確認申請』という手続きが必要です。現在ではこの手続きに必要な設計図書の作成は建築士にしかできません。さらに設計業務を行う建築士は建築士事務所登録をしなければなりません。この建築に欠かせない手続き『建築確認申請』と『建築士』の成り立ちについてご説明いたします。
■シーン①(大正~戦前)建築代願人制度
日本における、建築確認申請の歴史は浅く、大正八年に全国初の建築に関する法律である『市街地建築物法』が制定されたのに伴い、住宅の着工や竣工・使用開始にあたり手続きが必要になりました。そしてその頃この手続きを担っていたのが『建築代願人』と呼ばれる人たちでした。この建築代願人には規制をする条例などが無かった為に、大工や施工業者など様々な人々が業務として携わることができました。また、この頃の申請窓口は役所ではなく警察でした。しかし、手続きの数が増えるに従い代願人の質の低さが問題視されるようになり、昭和五年には東京で建築代願人規制が交付され、第一回代願人試験が行われました。これ以降単なる代書屋的な存在から専門的な建築技術者へと変化して行きます。
■シーン②(戦後~昭和25年頃)建築代願人から建築代理士へ
建築代願人という名称はイメージが悪いとの理由から、業者間ではこれを名乗ることを嫌う傾向があり、建築士や設計士など各々の独自の名称を名乗ることで混乱しつつありました。そこで東京都は建築代願人の名称を改称し建築代理士と定めました。しかし未だ建築代理士の規定は各自治体の条例で定められたものであり、他府県への仕事については、その府県ごとに資格を得なければならないという面倒が課題として残っていました。
■シーン③(昭和25年~現在)建築士の誕生
戦後の昭和二十五年、建築の設計及び工事監理を行う技術者を定めた『建築士法』が制定されました。これにより、それまで建築代理士によって行われていた建築確認申請業務は、建築代理士と建築士の二つのルートで行われることになりました。
昭和三十年代に入ると、次第に各地の建築代理士条例が廃止されてゆき、建築代理士の歴史的役割は終わりを告げましたが、建築代理士の名称は平成になって東京都建築代理士条例が廃止されるまで残り、建築代理士試験も昭和四十年ごろまでおこなわれていました。
このように建築確認申請業務は日本の近代化と共に、建築代願人→建築代理士→建築士と担い手が変遷をしてきました。
われわれが所属する一般社団法人東京都建築士事務所協会は、「建築士法」第27条2に明記されてる指定法人です。複雑化する建築業界に於いて建築士事務所の業務の適正な運営や、建築主の利益の保護や公共の福祉の増進に寄与を目的に活動している建築士事務所の団体です。葛飾支部は永年の建築行政への貢献が認められ、2019年6月に行われた『都市計画法及び建築基準法制定百周年記念式典』に於いて国土交通大臣より感謝状を贈られました。これからも建築の専門家団体として地域の建築行政に貢献してまいります。
<引用・参考文献> 『建築家と建築士 法と住宅をめぐる百年』 東京大学出版会 速水清孝著
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